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第79回 真壁伸弥

PROFILE

真壁伸弥(まかべ・しんや)

生年月日:1987年3月26日。宮城県

日本代表キャップ数:34

RWC出場歴:2015

ポジション:LO

▼ラグビー略歴:仙台工業高校→中央大学→サントリーサンゴリアス(7年目、主将4年目)。2009年11月21日(対カナダ)、テストマッチデビュー。

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  身長192㎝、体重125㎏。逞しい肉体を武器にボールを持ってひたすら突進し、チームの勢いを引き出す。そんなプレースタイルでファンに愛される真壁選手は、RWC2015でもインパクトプレーヤーとして投入されると、大きな声で仲間を激励し、あくなき突進を続けました。南アフリカ戦の後半に投入されてからの活躍も頼もしいものでした。真壁選手はサントリーの正社員でもあり、ウィスキー・エキスパートの資格を持ち営業に奔走しています。仕事の面でもRWCでの日本代表の活躍はとても大きかったようです。

 

インパクトプレーヤーとして指名され
出るものだと思って準備を重ねた3年間

 

  RWCを終えて帰ってきたとき、空港でたくさんのファンの皆さんが出迎えてくださった。そして、仕事で会う人たちの反響がすごくて、RWC前後で世の中がまったく変わったと感じました。僕はウィスキーを売る営業なのですが、面白かったのは、これまでまったくラグビーに関心のなかった取引先の人が、商談のときに、サンゴリアスの携帯ストラップを付けていたことです(笑)。仕事も非常にスムーズに進んでいます。あるスーパーの12月のチラシに僕が登場し、店頭でも僕の写真が置かれて、「お酒、おいしいですよ」とコメントしたり。ブログ「まかさんぽ」のアクセス件数も10倍くらいに増えました。

 

  RWCでの僕は、後半、インパクトプレーヤーとして出場することが多かったのですが、実は、2013年5月のウェールズ代表戦後、エディーさん(ジョーンズヘッドコーチ)に呼ばれて、「お前は後半チームに元気を与えるインパクトプレーヤーとして出すから、RWCまでにしっかり鍛えておいてくれ」と言われました。その言葉を信じて、2015年までトレーニングしてきました。ボールを持って相手にぶつかるときは姿勢を低く、しっかりボールをキープし、味方に供給することを心掛けました。サイズの大きな海外の選手に対して、力強く当たり、前に出る脚力も鍛えました。

  ただ、2014年の秋にアマナキ・レレイ・マフィ(NTTコミュニケーションズ)が日本代表に入ってきたときはビックリしました。すごいインパクトプレーヤーが出てきたと思い、自分が怪我をしてしまったこともあって、「あれ~、俺は切られるなぁ」と、(エディーさんを)疑いました。でも、怪我をしているのに日本代表合宿に呼ばれたので、これは僕を必要としてくれていると感じて期待に応えたいと思いました。

 

  南アフリカ戦のメンバーに入ったときも、実はいつものテストマッチと変わらない感覚でした。自分に与えられた役割を果たすことだけを考えていました。南アフリカ戦はいい流れだったので、途中で出場するときは、とにかくボールをキープし続けようとしました。最後のスクラムのときは、その前のスクラムで押せる感覚があったし、相手もシンビン(10分間の一時退場)で一人少なく、もう押すしかなかった。サインも「スクラムトライ」でした。そしたら、押されちゃいましたけど(笑)。あれは、相手が強かったです。なんとか、アマナキと日和佐がボールをキープしてくれて、そこからの攻撃で一度ボールを持ちましたが、その時も、しっかりボールをキープすることだけ考えました。

 

  リーチが右のタッチライン際まで行って、そのあと、日和佐が左オープンにボールをパスするのですが、僕はデコイ(囮)ランナーとして走り込もうとしました。ところが、その前に五郎丸さんが先に走り込んで行った。「やめてくれ~! 五郎(丸)さん、違う~!」と叫びました(笑)。もし五郎丸さんがボールを持ったら、助けに行こうと思っていたのですが、日和佐が僕らにはパスせず、立川にパスしてくれた。それで、ほっとして左を見たら、カーン・ヘスケスがいる。「え~、ヘスケス、いつ入ったの?」ってびっくりしているうちにトライでした。近くにいた五郎さんと抱き合いました。

 

  ほんとうに嬉しくて、強豪国には勝てないという勝手な思い込みがあったのですが、その殻を破れた気がしました。3勝1敗という戦績でありながら決勝トーナメントには行けませんでしたが、RWCは厳しい大会だと思ったし、次の日本大会では勝ち点の計算もしながら戦えるようにならなくてはいけないと痛感しました。

 

RWCの試合時間は瞬く間に過ぎ去った
あの場所にもう一度立ちたい

 

 RWCで印象に残ったことをよく聞かれますが、僕の感覚として通常のヨーロッパ遠征となんら変わりませんでした。エディー・ジョーンズヘッドコーチがそこまで考えて遠征スケジュールを組んでいたということだと思います。だからこそ、いつも通りの感覚で戦うことができました。

 

 RWCを経験して改めて感じたのは、ラグビーは全員で戦わないと勝てないということです。先発メンバーは15人ですが、控えも含めてチームは一つで、その一人一人に役割がある。その役割を準備段階で明確にしていかないと、RWCのような大会では力が出ない。僕はRWCでの自分のプレーをほぼ覚えていません。LOというポジションの特性かもしれませんが、とっさの判断も含めて準備しておかないと実際にはできないと思いました。試合時間は一瞬に過ぎました。南アフリカ戦の最後のスクラムも、実は、80分過ぎていたことに気付かなかったんです。あっという間に終わりましたね。

 

 またあの場所に行きたいです。そのためにトップリーグでまずいいパフォーマンスをして日本代表に選ばれたい。ラグビーのスキルももっとレベルアップさせたいです。僕のラグビーのスタンダードは低い。エディーさんだからこそ、僕を駒として使ってくれたと思っています。

 

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  2019年には日本にRWCがやってくる。嬉しいと同時に不安もあります。イングランドの大会では、どのスタジアムも満員で盛り上がり、スポーツを楽しんでいました。日本もそういう大会にできたら最高ですね。それを、これから4年かけて作らなければいけない。スーパーラグビーに参加するサンウルブズがラグビーの魅力を発信することが大事ですね。

 

  僕はサントリーの社会貢献活動で、ラグビーの普及活動にも参加しているのですが、他のスポーツとも一緒にイベントをするなどしてラグビーに関心を持つ人を広げていきたいです。そんなとき、子供たちにラグビーの魅力について話す機会があります。「ラグビーボールはこんな形だから、一人ではできないんだよ」とか、いろいろ話してみるのですが、ぽか~んとしている子供が多くて、頷いているのは大人ばかりだったりする。子供の心には刺さっていない気がします(苦笑)。ボキャブラリーが足りません。なんか、ないっすか?

 

TEXT by KOICHI MURAKAMI

 

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