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【RWC2015特別レポート】第6回 いよいよ4年に一度の世界王者が決まる ベスト4の激闘にラグビーの美学を見た

日本代表の雄姿もいまだ存在感放つ
スリリングな準決勝に息をのむ観客

 

スクリーンに映る日本代表のトライ

 

10月24日、25日、ロンドンのトゥイッケナム競技場で準決勝2試合が行われた。続々と観客が席を埋めるあいだ、大型スクリーンでは今大会のハイライト映像が流されるのだが、「もっとも印象に残った10シーン」の映像を眺めていたら、最後の1位は、日本代表のカーン・ヘスケスのトライだった。南アフリカ代表戦勝利を決めた瞬間である。大会の記念グッズなどを売るオフィシャルショップでは、日本代表関連のグッズがほぼ売り切れている。日本のファンだけではなく、海外のラグビーファンも日本の快挙の記念に購入しているようだ。いまだ日本代表の快挙の余韻が残っている。誇らしい。

 

準決勝のトゥイッケナム

 

準決勝2試合の内容はベスト4の激突にふさわしいものだった。試合前の演出も一段と派手になり、全参加チームの国旗を持ったダンサーが観客を煽り、多数の花火が打ち上げられ8万人の歓声も一段と大きくなった。24日のニュージーランド代表オールブラックス対南アフリカ代表スプリングボクス戦は、長らく世界のラグビーを牽引してきた横綱同士の重厚感ある戦いだった。圧倒的なスピードを誇るオールブラックスに対し、パワーで対抗するスプリングボクス。その圧力にオールブラックスらしからぬミスや反則が多くなった。最終的にはオールブラックスが勝ったが、南アフリカの意地とプライドをひしひしと感じた。初戦で日本代表に敗れ、監督が国民に謝罪する事態にまでなったラグビー大国の代表選手達にとって、汚名返上は優勝する事しかなかった。堅実な戦いで勝ち上がり、オールブラックスに対しても最後まで2点差で食らいついた。終盤は、疲労困憊の中で自陣から攻め続けた。最後まで戦い抜く。それが、スプリングボクスのプライドを守る唯一の方法であるかとでも言うように。

 

試合後、「感情的になってしまい、受け入れるのが難しい」と言葉少なに敗戦を語ったキャプテンのフーリー・デユプレア。腫れあがった頬が激闘を物語る。ピッチでは、オールブラックスのスーパースター、ソニー=ビル・ウィリアムズが、芝生の上に座りこむスプリングボクスの若きCTB、ジェシー・クリエルの肩を抱き慰めていた。そんな光景がいたるところにあった。体をぶつけ合った者だけが、その心の痛みも理解するということなのかもしれない。

 

翌日のオーストラリア代表ワラビーズとアルゼンチン代表プーマスの闘いもすさまじい内容だった。こちらは前日の重厚感とは打って変わって、互いに攻め合い、ターンオーバーが連続するスペクタクルな展開になった。最終的にはワラビーズが、WTBアダム・アシュリークーパーの3トライなどで勝ったのだが、立ち上がりからエンジン全開で攻めたプーマスに感動をした人は多かっただろう。自陣でミスをしてトライを奪われても、「取られたら取り返す」と、攻撃をやめない。一人一人が自分の持てる能力をフルに使ってディフェンダーに向かっていくところにも好感が持てた。キャプテンのHOクレーヴィ、CTBエルナンデス、今大会5トライのWTBイモフという主力選手が次々に負傷退場しても、代わった選手が思い切って攻め続けた。後先のことは考えず、いま、この瞬間にすべて出し切るプーマスのスタイルは魅力的だった。手堅く勝ちに行くのは彼らの美学に反するのだろう。プーマスはプーマスらしく、今後も世界のラグビー界で独自の輝きを放つだろう。

 

準決勝第二試合、アルゼンチン代表に花道を作るオストラリア代表

 

その攻撃を受け止め、しのぎ切ったワラビーズのディフェンスも驚異的だった。何度もボールを奪い返したNO8デヴィッド・ポーコック、精根尽き果てるまでタックルにボール争奪戦に体を張り続けたFLスコット・ファーディー(元・釜石シーウェイブス!)は出色の働きだった。そんなワラビーズが、花道を作り、プーマスをピッチから送り出す。ラグビーでは当たり前の光景だが、この日のワラビーズの整列は、プーマスに対しての畏敬の念があふれていた。拍手を送らずにはいられなかったのだ。ノーサイドの瞬間の歓声、拍手は、今大会で一番大きなものに感じた。「最後まであきらめずに戦い抜いた選手達を誇りに思う」(アルゼンチン代表ダニエル・オルカデヘッコーチ)。これぞラグビーワールドカップ(RWC)である。いいものを見せてもらった。両チームの選手に感謝したい。

 

2試合を残し、史上最多の観客数を記録
最後は、初の連覇か、アウェイでの3度目の頂点か

 

準決勝の会場の様子

 

ホスト国イングランドが早々に敗退したにもかかわらず、準決勝2試合は、それぞれ8万人超の大観衆を集めた。ここまで46試合で総観客数は、2,341,755人となり、過去最多だった2007年のフランス大会を越えて最多記録となった。残り2試合で240万人の大台に乗るのも確実である。器が大きいことは当たり前の理由だが、イングランドはラグビーをはじめ、さまざまなスポーツが生まれた場所であり、スポーツが日常にある国だからこその数字かもしれない。日本で開催されるRWC2019まであと4年である。ラグビーだけではなく、スポーツを観戦する人々を増やすこと、そして、すでに存在するスポーツファンに対して、ラグビーに関心を持ってもらうようなアプローチもこれまで以上に必要だろう。

 

RWC2015は、いよいよ3位決定戦と決勝戦を残すのみとなった。10月19日現在の世界ランキングでは、1位ニュージーランド、2位オーストラリア、3位南アフリカ、4位アルゼンチン。その通りの順位になるのか、それともオーストラリア、アルゼンチンが番狂わせを起こすのか。3位決定戦に関しては、準決勝で敗れたあと、どう気持ちを持ち直せるかにかかっている。負傷者も多く、疲労の蓄積もある。これまで出場機会のなかった選手を多数投入するかもしれない。屈強な南アフリカ選手の突進をアルゼンチンが得意の低いタックルで止め、ランニングスキルの高いBKが個人技を駆使して走り回れば面白い試合になる。これまで手堅い戦い方をしてきた南アフリカも、思い切った攻撃的スタイルでトライを狙うかもしれない。RWC通算15トライの記録を持つブライアン・ハバナ(南アフリカWTB)が記録を更新するかもしれない。ロンドンのオリンピックスタジアムでのこの試合は、今大会を振り返りつつ楽しんでみてはどうだろう。

 

そして、10月31日の決勝は、2011年大会の優勝以降、「最強」の名をほしいままにしてきたニュージーランド代表オールブラックスと、タスマン海をはさんだライバル国オーストラリア代表ワラビーズというカードになった。ともに過去2度の優勝を果たしており、3度目となれば史上初。オールブラックスが勝てば史上初の連覇となる。いずれにしても、最後は新記録で締めくくられるわけだ。オールブラックスは準決勝こそ、20-18という僅差勝利だったが、多彩な攻めと鉄壁の防御で懐の深さを見せつけた。ここまで比較的楽に勝ち上がっており、プール戦から激闘を潜り抜けてきたワラビーズに比べれば疲労も少ないはずだ。しかし、過去のRWCでの対戦では、2勝1敗とワラビーズが勝ち越しており、英国で行われた1991年(イングランド)、1999年(ウエールズ)大会もワラビーズが制している。両チームともテストマッチ(国代表同士の試合)の出場経験が100試合以上の選手を複数擁し大舞台の経験値は高い。立ち上がりの10分で、ワラビーズがオールブラックスを慌てさせるような仕掛けができれば面白くなる。この決勝戦を見ずして、ラグビーは語れない。

 

◎3位決定戦(※日本時間)

10月30日(金)=南アフリカ 対 アルゼンチン(※31日 5:00)

◎決勝(※日本時間)

10月31日(土)=ニュージーランド 対 オーストラリア(※11月1日 1:00)

 

 TEXT by KOICHI MURAKAMI