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【RWC2015特別レポート】第4回 ラグビーワールドカップ2015は、決勝トーナメントへ 日本代表は、もっとも愛されたチームとして大会を去った

大野均選手

 

日本の守護神・五郎丸歩が流した涙
37歳の大野均は元気に現役続行宣言

 

 

アメリカ代表に28-18で勝利し、日本代表は3勝1敗でプール戦(一次リーグ)を終えた。10月11日、グロスターのキングスホルムスタジアムでのことだ。熱心なサポーターで埋め尽くされた観客席からは惜しみない拍手が送られた。「ラグビージャイアント」南アフリカから歴史的勝利をあげ、屈強な選手が揃うサモア、アメリカを倒した日本代表は、イングランドの人々からも温かいサポートを受け、今大会で最も愛されるチームになっていた。

 

アメリカ戦のマン・オブ・ザ・マッチ(最優秀選手)は、3PG、2Gの13点をあげた五郎丸歩。表彰式のインタビューでは、こみ上げる思いを抑えきれずに涙を流した。僕はこの試合を放送したJSPORTSのインタビュアーとして、その直後に五郎丸にコメントを聞くことができた。「ノーサイドの瞬間、どんな気持ちでしたか」と問いかけると、「複雑です」と再び感極まって涙を流した。「目標は決勝トーナメント進出だったので、誰も満足はしていないと思います」。しかし、その涙は悔しさだけではないと感じた。もっとたくさんの言葉にならない想いがあったはずだから。

 

チームメートや、日本のラグビーファンの期待を一身に背負い、たった一人、静寂の中でゴールを狙ってきた。その右足には日本ラグビーの未来がかかっていた。チームの中ではリーダーとして弱音を吐くことはできかったし、愛する家族と離れて生活するのもストレスがあっただろう。しかも、2005年に日本代表デビューを果たしながら、2007年、2011年大会の日本代表には選出されなかったのだ。今大会にかける気持ちも人一倍だった。マン・オブ・ザ・マッチの表彰を受けながら「ラグビーにヒーローはいらない」とも語った五郎丸は、翌日の記者会見で「今朝も練習着に着替えて、ヘッドスタート(早朝練習)するのかなって…」と、練習のない朝を少しさびしそうに語った。

 

リーチ マイケルキャプテンも、「このチームで試合できないと思うと、さびしい気持ちです」と言い、エディ・ジョーンズヘッドコーチは、報道陣から日本代表の指揮をとった3年半に後悔はあったかと問われ、「後悔はありません。ミスは何度も犯しました。そのたびに学びました。楽しみましたよ」と笑顔で答えた。選手、スタッフを時には厳しい言葉で叱責し、高いレベルを要求し続けたコーチと、それに耐え、乗り越えてきたスタッフ、選手たちの複雑に絡み合った想いを感じる朝の会見だった。

 

付け加えたいのは、2人のロックのことだ。獅子奮迅の働きだったトンプソン ルークはアメリカ戦後、日本代表からの引退を宣言した。彼の存在なくして3勝はなかった。本欄選出の大会MVPとして表彰したい。賞金も商品もないけれど。そのトンプソンが「僕はもうおじいさんだから最後だけど、キンちゃんは4年後もやるかもね」と言った37歳の大野均は翌日の会見で、ややけだるい顔をしていた。報道陣から「昨夜は何杯飲みましたか」と問われると、「数えられないくらい飲みました」と豪快なコメント。そして「現役でいる以上、桜のジャージーを目指したい」と今後の日本代表への意欲も語った。トンプソンの言う通り、キンちゃんはこれからも世界を見据えて戦い続けるのだ。

 

今大会の日本代表は、熱心なラグビーファンに幸せを運び、2019年の日本大会の成功に向けて心強い追い風を吹かせてくれた。こんなに誇らしい日本代表はかつていなかった。ラグビーに携わってきた者の一人として心から感謝したい。

 

 

空前の盛り上がり見せたプール40試合
ベスト8の戦いを楽しみ、4年後への準備を

 

 

プール戦40試合で、総観客数は史上最多の1,881,023人、ウェンブリー競技場で行われたニュージーランド対アルゼンチン戦は、一試合における最多となる89,267人の観客を集めた。ホスト国(イングランド)がプール戦で敗退する初めてのチームとなるなど記録ラッシュの大会のなかで、日本代表が34-32で南アフリカを下した勝利の「34」という数字も遠くまで語り継がれることになる。

 

さあ、いよいよ決勝トーナメントである。死のプールと言われたプールAを1位通過したオーストラリア代表ワラビーズは、日本代表を破ったスコットランド代表と対戦。日本代表に歴史的敗北を喫した南アフリカ代表スプリングボクスは、ウェールズ代表のチャレンジを受ける。欧州王者のアイルランド代表は大方の予想通りプールDを1位通過し、南半球4強の一角・アルゼンチン代表プーマスと戦う。そして、史上初の連覇を狙うニュージーランド代表オールブラックスは、フランス代表と相対する。場所はウェールズのミレニアムスタジアム。このシチュエーションは2007年のフランス大会と同じである。あのとき、優勝候補筆頭だったオールブラックスは、フランスに敗れて大会を去った。ニュージーランドのラグビーファンには嫌な記憶が蘇っていることだろう。

 

RWCの優勝を占う時、誰もが「フランスだけは分からない」と言う。フレアーラグビーと言われる創造的なプレーとメンタルの強さで、突如変貌して強豪にかみつくのがフランスである。2011年大会の決勝戦でもオールブラックスを1点差に追い詰めた。10月17日(日本時間18日)の試合は必見だ。ここからはどこが勝ってもおかしくない戦いが続く。フランスの記者がプレスセンターでつぶやいていた。「ジャパンが南アフリカに勝ったんだから、何が起こっても不思議はないよ」。日本に敗れた南アフリカはどこまで勝ち進むのか。日本に勝ったスコットランドは? 今大会はいつまでも日本代表の活躍を思い出しながら語ることができる。日本のファンにとって、これほど楽しいことはない。いろんな国のラグビースタイルを大いに楽しみ、4年後の準備をしてもらいたい。

 

◎準々決勝(※日本時間)

10月17日(土)=南アフリカ 対 ウェールズ(※18日0:00)

10月17日(土)=ニュージーランド 対 フランス(※18日4:00)

10月18日(日)=アイルランド 対 アルゼンチン(※18日21:00)

10月18日(日)=オーストラリア 対 スコットランド(※19日 0:00)

 

 

TEXT by KOICHI MURAKAMI