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伊藤鐘史

伊藤鐘史(いとう・しょうじ)

生年月日:1980年12月2日。兵庫県出身

日本代表キャップ数:36

RWC出場歴:2015

ポジション:LO

 

▼ラグビー略歴:兵庫工業高校→京都産業大学→リコーブラックラムズ→神戸製鋼コベルコスティーラーズ(7年目)。

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伊藤鐘史という名前には、歴史に響く鐘を打てというお父さんの思いがあるそうです。まさに世界中の人々を驚かせ、感動させた日本代表の一員となった伊藤選手は、2012年、31歳になって日本代表に選ばれるという遅咲きの選手でした。RWC2015の日本代表を率いたエディー・ジョーンズ氏は、そのクレバーなプレーを高く評価していました。大会前の怪我もあり、出場したのはスコットランド戦の一試合となりましたが、伊藤選手は世界の大舞台で何を感じたのでしょう。

 

RWCを意識したのは、2003年大会

それから9年後に日本代表初選出

 

 日本代表に選ばれたのが31歳ですから、正直なところRWCというのは、まったくイメージできませんでした。目の前の試合を積み重ねていたら、RWCイヤーになり、ここまで来たら行きたいと思って日々を過ごしました。

 

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 大会前の8月の宮崎での合宿中に「ノンメンバー」が発表されました。RWCに行けない選手を先に発表し、彼らが合宿を後にすることになったのです。つまり、残ったメンバーはRWCに行けることになったわけですが、喜びよりも、行けなかった選手達のためにも結果を残したいという気持ちになりました。その後、東京に戻って壮行会に出た時には、よし、頑張ろうという前向きな気持ちになっていましたね。

 

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 僕がRWCを意識するようになったのは、大学を卒業して、社会人で一年間プレーした後ですね。なんとか社会人でもやっていける手応えをつかみ、その先を目指したいと思いました。2003年のRWCの頃で、もし、自分があの場所に立ったらと、イメージして見るようになりました。

 しかし、その後は日本代表には縁がなく、2012年に選ばれたというのは、「このタイミングで来るのか」と驚くくらい遅かったですよね。

 初めてRWCに参加することができて、毎日、時間が過ぎるのが早くて世界大会の雰囲気に浸る間もなかったですね。「あっという間に過ぎ去った」という言葉がぴったりです。個人としてもいつものテストマッチ以上に集中するし、チームとしても目の前の試合に全力で取り組む。だからこそ、時間の流れが早く感じたのだと思います。夢の舞台に来たという感慨よりも、ひとつの試合が終われば次の試合という感じで、プレッシャーのほうが大きかった気がします。

 

今まで生きてきた中で一番の感動

短いプレー時間でも感じた幸せ

 

 一番印象に残っているのは、南アフリカ戦の最後の10分です。試合に出ない選手達とスタンドの上のほうで見ていたのですが、いてもたってもいられなくなって、みんなで下に降りました。

 ベンチにいる控え選手と一緒に見ていて、リーチ マイケルキャプテンが最後のPKでスクラムを選択して攻め始めたところから、最後にカーン・ヘスケスにボールがわたるところまではスローモーションのように憶えています。トライになった瞬間に雄叫びをあげ、みんなと抱き合い、自然と涙があふれました。

 試合に出ていないのに今までにない感情の昂りでした。本来であれば出られなかった悔しさが勝つはずなのに、素直に喜べた。チームが本当に一体になっていたからだろうと感じます。今まで生きてきた中で、あらゆることを含めて一番の感動でした。「言葉にならない」というのは、ああいうことを言うのでしょうね。

 試合後、いろんな人からメールが届いたし、日本に残ったバックアップメンバーも、ツイッターなどでコメントしていて、その喜びが伝わりました。内田啓介が「ジャパンを誇りに思う」と書いていましたね。

 

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 僕は、第2戦のスコットランド戦に15分だけ出たのですが、普段のテストマッチとは違って両チームがより一段レベルが上がった状態で戦っている。その場にいられたというのは、いま思えば幸せですよね。途中出場だったので、あの時は、なんとか流れを変えたいと必死でプレーしただけなのですが。

 すごくいい経験だったし、もし、あの経験を若い頃にしていたら、その後は違ったものになったでしょうね。あの舞台で戦うために次の4年間をプレーするのでしょうから。それくらいスペシャルな場所でした。早くに経験していたら、また違った視点でラグビーに取り組んでいたでしょうね。

 

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頑張っているチームや選手を応援する

そんな会場の雰囲気は新鮮だった

 

 全選手に日本代表になるチャンスがあるし、RWCの場に立てるチャンスもあるのだから、全選手に狙ってほしいです。そうすることで、日本全体のレベルも上がる。一人でも多くRWCを体験することで、ラグビーの素晴らしさも伝わっていくと思います。

 帰国後は、街中で「お疲れさま」と声をかけられたり、息子たちが五郎丸ポーズをしていたり。幼稚園児や小学生がラグビーをして遊んでいる。世界で勝つことは何よりの普及だと思いましたね。

 今後の日本代表については、ハードワークは不可欠。そうしないと日本の強みは出てこない。桜のジャージーを着るプライドを感じてプレーし、あのジャージーの価値を上げてほしいです。

 2019年は初めてアジア圏にRWCがやってきます。正直、想像がつかないです。関係者として成功させたい気持ちはありますが、初めて見る方にはお祭りのような雰囲気を楽しんでもらいたいですね。それが成功につながるのではないかと思います。

 RWC2015が行われたイングランドで感じましたが、会場の中で違うジャージーを着ているファンが試合後には握手をしている。日本でよく言われるノーサイドの精神は世界のラグビーファンにもあるのです。南アフリカのサポーターにも、試合が終わってから握手を求められた。ラグビーというスポーツは一体感があります。人種を超えて、ラグビーを通じた仲間ができる。頑張っているチームや選手を応援するという会場の雰囲気は新鮮でした。そういう雰囲気を日本でも作ってほしいですね。

 2019年もグラウンドに立ちたい思いはありますが、現役であろうと、引退していようと、何かしらサポートしたいと思っています。

 

TEXT by KOICHI MURAKAMI

 

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